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「何なのかなぁ、もう」
「どした?」
まさかのまさかで、一週間同じことが続いた。私は朝のホームルーム前、ざわついた教室でスマホを見ながらぼやく。
電話帳には、クラスメート三十二人全員分の連絡先がきっちり登録されている。去年から続く、これも私の拘りの一つだった。クラス全員と友達になりたい、という名目のこと、必ず一カ月以内に全員のメアドを聴いて登録することにしているのである。まあ、スマホを持っていない子がいたら例外なのだが、少なくとも今年は全員が持っていたので問題なかったというわけだ。
「だってさあ、一週間ずーっと同じことが続くんだもん」
私は舞香ちゃんに、最近のことを話す。
「私が遅くなって教室に一人で戻ってくると、いつも同じ席に、鍵の忘れ物があってね?その鍵がなくなったら大変だと思って、落とし物ボックスに入れて帰るの。すると、次の朝にはボックスから鍵がなくなっててー、持ち主の元に戻ったんだ良かったーと思ったらまた放課後机の上に鍵が忘れてあんのー」
「え、え?それが一週間?」
「うん。何で毎日毎日、鍵なんて大事なもの忘れてくのかなあ。多分、家の鍵だと思うんだよね。ゴジラ?みたいな怪獣のキーホルダーがついてるの。おうちに帰った時、困ったりしないのかなあ?」
私がひとしきり説明すると。いつもニコニコの舞香ちゃんの様子がおかしい。
青ざめた顔で、それって変だよ、と言った。
「うん。毎日同じ忘れ物なんて、そりゃ変だよね舞香ちゃん」
「それも変だけど、それ以前のところもおかしいってばキッシー。……何で毎日、キッシーは帰りが遅くなってるの?一人だけで教室に戻ってくるシチュエーションが一週間続くのってなんかおかしくない?」
「え」
言われてみれば、それもそうだ。私は一週間、なんで帰りが遅くなったのかを思い返してみた。受験予定でもないし塾にも通ってないしクラブ活動もないので、遅くなることそのものにさほど問題はない。でも学校の授業が終わる時間を鑑みると、毎日四時頃に教室に戻ってきて帰る生活が続いているというのは少し奇妙ではある。
「一番最初の日は、先生に書道の賞のことで呼ばれたんだけど……」
それは覚えている、でも。
明らかに変だった。二日目以降、どうして自分の帰宅が遅くなったのかを覚えていなかったからである。
もっと言うと、いつも教室に戻ってくるのは四時前。
その時間に、必ず教室に私以外に誰もいない。それこそ、他にも委員会だとかクラブ活動とかで、私より遅く帰る子がいてもおかしくはないはずだというのに。何故毎度毎度同じ時間で、同じシチュエーションが繰り返されるのか。
「変なことはまだあるよ」
眉をひそめて、舞香ちゃんが言った。
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