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聞き込み
地方の交番勤務から叩き上げの高橋は、徹底した現場主義者だった。「自分の足と目で集めた証拠が全てだ!」泥臭いその理念で数々の難事件を執念深く追う。
今回も高橋は被害者の家宅をまず訪れた。
「一人目の被害者、矢口勝利」
事故死で処理された案件を引っ掻き回すのは本来許されたことではない。
(上にバレたら即座に止められるだろう。急いで三件分の聞き込みと家宅捜査を済ませちまわねぇと)
高橋はそう意気込んでいた。
「お父さんの交友関係とかってご存知ないですか?」
「さぁ……普段は他県に住んで居るもので、よくわからないです」
50代の娘さんは少し不満げにそういった。
「行きつけの店とか……」
「わからないです」
ピシャリと言い切られて、高橋は押し黙る。これ以上は刺激しない方がいい。
「これは……」
机の上に置かれた郵便物はほぼDMだった。念のため写真を取らせてもらい、高橋は矢口の家をあとにした。
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