トカゲのしっぽ切り

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「悪に染まりきれない悪人ってのは惨めなもんだね」 引きずられるように連れ出される佐々岡をマジックミラー越しに見ていた白石は呟いた。 「そんなことはない。悪に染まってないってことは引き返せるってことだ。人間は誰だって間違いを犯す。間違いに気づきやり直すことが大事なんだ」 「でもあの若者が人殺しの幇助をしたっていう罪は消えないよ」 「無知は罪だが、無知な若者を利用した巨悪こそ滅されるべきだろう?」 「君は甘いねぇ。尻尾斬りをした本体がいつまでもその場に残っているわけ無いだろう? とっくに逃げ切ってるよ」  白石の言うとおり捜査は程なく暗礁に乗り上げた。上層部に何らかの圧力がかかり、中途半端に打ち切られた形だった。  事故死扱いに戻された3件の変死事件のファイルを投げつけて高橋は怒りをあらわにしたが、一介の警部でしかない高橋にはこれ以上どうすることもできなかった。
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