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白石が指し示した光化学顕微鏡を見つめ、高橋は小さく呟いた。
「やっぱり死体は光っていたのか?」
「正確には死体が光っていたのではなく、細胞の中の染色体が発光していた」
「おい、どういうことだ?」
「だから説明していたんじゃないか。人の話は聞くものだ。さっき染色体の話をしただろう? 君が持ってきた死体の一部を調べたところ、染色体に発光性の変異が見られた」
「発光性の変異だと? 俺たちが検視したとき死体は光ってなどいなかったぞ!」
「染色体っていうのはいつでも染められるわけじゃない。細胞分裂期に細胞の核が壊されて棒状の構造体がむき出しになる。それを染めて我々は光化学顕微鏡で観察できる状態にするんだ。つまり核に守られている状態では染まらない。発光もまたしかり」
「さっぱりわからん」
ぼやく高橋を睨みつけながら白石はため息をついた。
「一体どこまで噛み砕けば理解するんだ!」
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