遺伝を司る物質

6/6
前へ
/25ページ
次へ
「ところでその『光る染色体』ってのは何なんだ? 突然変異みたいなものか?」 「とんでもない。変異というよりは、もはやだ。こんな染色体を持つ生物は生物学上『ヒト』ではない」 「人ではない!?」 「ああ。発光する細胞を持つ生物は自然界に実在する。2008年にノーベル化学賞をとった下村脩博士の研究を覚えているか?」 「ああ、緑色に光るタンパク質を発見したんだったか?」 「そのタンパク質はオワンクラゲから発見された。オワンクラゲは体内に発光細胞を持つ生き物なんだ」 「光る死体はクラゲ型の宇宙人だったとでも?」 「この物証を見たら宇宙人存在説のほうが科学的に思える」  白石に促されて覗き込んだ光化学顕微鏡の中では染め出された『染色体』が青白い光を放っていた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加