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私は大きな桃を二つ実らせた女である。お乳とお尻。これにどれほどの意味があるのか私は知らないけれど、男という生き物はこれが最後の晩餐であるかのように私を食らう。女は求められてこそ実るものだとばかり思っていましたけれど、私はそうじゃない。もちろん欲求は高まり、男性のそれに突かれて喘ぎ、セックスは謳歌できるのだけれど、私は、私が私のために私でいれる何か特別なものを欲した。
世の女性が羨むこの美貌を武器に、今度は私が幾度の男を食らってやったわ。時には痴女だなんだと陰口を言われ、女友達も日に日に去っていったけれど、私にとって褒め言葉でしかないわ。
「だから言ってやったのよ、ありがとうって」
「強いねぇ、そういうとこが魅力的だよね」
バーで一緒に飲んでいるこの男はカメラマンを目指しているまだ卵のサラリーマン。まだ華を咲かせていなかった頃の自分の話を肴にカクテルが進んだ。
私は二週間前、この身体に命を刻んだ。それ以来誰とも寝ていないし、撮影の仕事も一件も入れていなかった。ヌードモデルとしてデビューする前からお世話になっているこの男の前で初めて脱ぐために。まだ誰にもそのことは打ち明けていない。
「今日ホテルへ行ける?」
他の客に聞こえないように耳元で囁いた。
「もちろん。そのために明日有給取ってるんだから」
「ありがと…」
自分の右腕や左肩を撫でた。下着にも隠れない美しいものを。
ホテルへチェックインするなり男の腕を引き、ベッドに腰かけさせた。ようやく人の目に触れるのだと心臓が五月蠅い。今まで人前で裸になってことがないような錯覚を起こすほど、お膣まで疼いているように感じる。脱ぎやすい軽装を一枚、また一枚脱ぎ、ほろりと肩を見せた。ブラジャーの紐が重なったそれは、肩から胸元まで彩る美しい紫陽花。シャツを脱ぎきり腕を飾る薔薇も魅せた。それは恥じらいよりも自慢げだったように思う。
「これ…いつの間に…」
刺青に触れる男の指先がやけにいやらしく、肩が性感帯になってしまったように声を漏らしてしまった。
「綺麗?」
「ああ、とっても」
男はブラジャーをすぐに外さず、肩から腕へと華に口づけをした。唇でそっと触れ、舌で味わい、息を肌にかけた。
これが私。その衝動が抑えらず自らブラジャーを外し、お乳の先を手で隠して男の上に覆いかぶさった。
「美しいでしょ」
華が、じゃない。この枕のような豊満なお乳も、この腕も、短い髪も、この華でさらに美しいでしょ。
私は芸術を生んだのではない。美術に優れていたわけでもない。生まれたままの姿でいるこの身体が、私自身が芸術なのよ。この華たちは私によく似合ってる。鏡もそう言っているわ。私だから似合っている。腕の傷跡が勿体ないって?何を言っているの、何を見ているの。傷を傷と呼んでしまう哀れなお人に私の芸術がわかるわけないわ。
男の勃起したものが私の恥骨あたりを焦らしている。私はたまらず、シーツの上に落ちてある煙草に手を伸ばした。角が潰れた箱から一本咥えると、男が慣れた手つきでジッポを擦った。煙を吐き出し、男も煙草を咥え全裸になった。視界が煙たくなると二人の息がやけにロマンチックでムラムラした。男の指先が私の泉を確かめるとぴちゃぴちゃと合図の鐘を意味した。
「いやらしくてごめんなさい」
過度に漏れる私の吐息が、自分のいじらしさがお恥ずかしい、と言っているみたいでお恥ずかしい。
「その華ごと、抱かせて」
腰を落とすより先に、男の勇ましく勃起したそれが私のお膣を埋めた。私はとても可愛らしく喘いで、大きなお乳は大胆に揺れ躍る。華を添えられ喜んでいるみたいに弾む。男の視線は華を見ているのか、それともお乳を挟むようにしている腕の宝石という名の傷か、それともやっぱり男なんて生き物はいやらしくお乳しか見ていないのか。今の私にとってはそのどれもが喜びであった。私は私を生まれ変わらせたのだ。私が私に恐れることなどもう何もない。だから私は裸になってすべてをさらけ出して格好良く生きるのよ。
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