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妹の思いsideアイリス
お姉さまの幸せのためなら、何だってやれる。
私たちは本当の姉妹じゃない。お父様やお母様は隠しておるけど、私は二人が話しているのを聞いてしまった
お姉さまも薄々気づいているでしょう。
けれど、いつも優しく包み込んでくれた。怪我をしたらすぐ癒してくれたり、お姉様のように勉強がうまくいかなくても、教育係のように怒鳴りつけられない
『貴方は自分のペースでいいのよ』と年はほとんど変わらないのに、お姉さまは私より、うんと大人だった
いまでも記憶に残っているのは、お姉さまの幸せような横顔。
お城のパーティーから帰って来てから、お姉さまは幸せそうに笑うようになった
別に、お姉さまは笑わなかったわけではない。心の底からのような笑みを見たことがなかった
お姉さまに聞くと、
「素敵な王子様に会ったの」と言っていた
それはレイナート殿下だと思っていた。だから、お父様に王家から婚約の打診が来た時、「きっとお姉さま、王子様のことがお好きなのよ!前に素敵な王子様に会ったの、と言っていたもの!」と言ってしまった
もし、あの時に戻れるなら戻したい。だって、お姉さまの地獄の始まりだったのだから。
お姉さまはレイナート殿下といる時、作り物のような美しい笑みしか浮かべていなかった。けれど、フリード殿下といらっしゃる時だけは、心の底からのような美しい、女神のような笑みだった
けれど、愚鈍な周りの奴らは気づいていない。お姉さまの笑みにの違いにも気付けない愚かな奴しかいないから。
お姉さまとレイナート殿下の婚約をどうにか、レイナート殿下の有責で破棄できないか、を考えていた時、こっそりと訪れたお姉様の神殿の部屋である小説を見つけた
最近流行りの、逆ざまぁするお話。偽物の聖女と罵られたけど、本当は本物だったとか、冤罪で婚約破棄された令嬢が隣国の王子様と幸せになる話とか
(あぁ、彼女たちみたいになれば、お姉さまは婚約を破棄できるかもしれない…けれど、必ず王子側に浮気相手がいるわね…それを誰にするか…)
名案だと思ったが、国外追放、下手すれば処刑ものになるかもしれない。
迂闊にそこら辺の令嬢に頼めなかった。まぁ、そもそもレイナート殿下は横暴で人気があまりないのだけど。
この作戦の最大の難関はレイナートの浮気相手。身分はまぁ、よしとして、容姿が良くて頭が悪そうな…
(いいえ、やはりこの作戦は一人でどうにかしなくてはいけない…なら、私が浮気相手を…)
お姉さまの幸せのためだったら何だって、やれるのが私だ。
なら、することは一つ。
「頑張って、レイナート殿下の浮気相手を演じるわよ!」と拳を高く突き上げ、決心した
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