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「え?じゃあ正田さんと付き合うの?」
「うん、まあ」
ガサガサと赤や黄色の落ち葉を蹴散らすショータに俺はうなずく。
「いいな〜、なんで?」
「なんでって何だよ?」
「なんでカナタがモテて俺がモテないかってことだよ」
わざわざ寄った公園で、ショータはダッシュしながら叫んだ。100メートル、正確には測ってないので勘の長さではあるけれど、モテるために体を鍛えようって冗談で始めたトレーニングをショータは今日もこなす。
シーソーからすべり台までの間、約100メートルダッシュを10本。そのあとはすべり台の高いパイプを掴んで懸垂をできるだけ。
秋の公園は落ち葉だらけだ。抜けるような青空と枯れていく木々、足元を埋める鮮やかな落ち葉のコントラストはめっちゃきれいで、確かに秋は公園の旬かもしれない。
「カナタ、モテたってことはもう体変わったの?」
たった一日で変わるわけねえじゃん。
答える前に、ショータは俺のシャツをめくって「別に変わんねー」と首を傾げている。
そうだ。別に変わらない。
正田さんに告白されたその足で俺はいつも通りショータとこうして遊んでるくらいだし。
「せっかくだし一緒に帰らない?」と正田さんには言われたけど、今日告白されるなんて思いもしなかったし、普通に俺を待ってるショータを無視できなくて、結局「また今度」と断ってしまった。
「あーあ、俺とお前で何が違うんだよ」
「そりゃ違うだろ」
「え〜、俺たち小学校から一緒なのに?同じ給食たべて同じ勉強してきたんだぞ?製造元は一緒じゃん」
「母校を製造元扱いすんの、お前くらいだよ」
俺は苦笑する。本当にショータはバカだ。それでいくと俺とショータ以外もそっくりさんだらけになってしまう。
「例えばさ、この公園を学校とするだろ」
「公園は学校じゃないぞ」
「例えばだから。お前の蹴ってる落ち葉だって、イチョウもあればモミジもあるだろ。公園にいろんな木があるように、学校にもいろんなやつがいる。同じ公園だからって同じ木ばっかじゃないじゃん」
「あー」
本当にわかっているのだろうか。生返事をしたショータが「でも」と言う。
「でも俺、カナタは一緒だと思ってた」
ガサガサと音を立ててショータが落ち葉に手を突っ込んだ。「ん」と差し出したその手には二枚のイチョウが握られている。秋の陽射しを閉じ込めたみたいな、からりと明るい黄色の葉っぱ。
「いっこやるよ」
「おお」
別にいらないけど。
断る理由もないし、なんとなく俺はそれをポケットにしまった。
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