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『おはよー』
『おはよー』
『元気?』
『うん』
『今日の1時間目、数学だー。だるー』
『がんばれ』
今朝も正田さんとの定期通信が終わった。
相変わらず、どうにも盛り上がらない。
ショータは今日は休みだ。昨日汗をかいたのをそのままにしたせいであいつは風邪をひいたらしい。ひとりで乗る通学電車は異様に長くて、俺は手持ち無沙汰にスマホをいじる。
『ごめん、今日休むからひとりで行って!』
『どした?』
『風邪ひいた。古文と地理のノートとチョコミント求』
『おけ』
見返して、正田さんとのやりとりとショータとのやりとりに大きな違いはない気がするけど、どうしてか俺はショータの方により質量を感じる。
ショータはちゃんと俺に用があるのだ。正田さんのは俺じゃなくても返信できそうだけど、ショータのメッセージは俺っていう相手が明確に見えている気がする。
放課後、家に寄ったら、ショータはもう回復していた。
「よう!」
「ズル休み?ずいぶん元気そうじゃん」
「うん。寝てたら熱下がった。上がってく?」
誘われるまま、俺はショータの部屋に行く。
ショータの部屋は2階だ。ここん家の階段を俺は自分ち並みに登り慣れている。
ショータはマジで全快したようで、俺の買ってきたスーパーカップのチョコミントをガツガツ食う。そのとなりで俺も同じのを食う。
テレビで見たんだったか、アンケートを取ったら、日本人でチョコミントが好きな人と嫌いな人はちょうど半々くらいだそうだ。意外だ。ショータと俺に聞いてくれたら100%好きになる。
「週末さ、映画行こうよ。寝てんのヒマでネット見てたら面白そうなの見つけた」
ショータがスマホを見せてくる。
見つけたも何も、表示されてるのはアベンジャーズの新作だ。本当にこいつバカじゃん。超有名タイトルなのにずっと知らないできたのか。そういう俺も観たことはないんだけど。
「いいけど、これシリーズものじゃん。観に行く前に予習いるんじゃね?」
「アマプラにあるかな?よし、リビング行こうぜ!」
ショータの目が輝く。
マジで仮病だったんじゃないかと思うくらいにイキイキしてる。まあ、元気で良かったけど。
結局その後、俺とショータは帰ってきたショータの姉ちゃんに「お前ら邪魔」って言われるまでリビングでアベンジャーズを見続けた。
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