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そろそろ帰ろうかと思い、パソコンの電源を落としていると、私のスマホが震えている事に気付く。
デスクの隅に追いやられて、資料の上に伏せられていたそれを払い上げれば、丁度鳴り止んだ模様。
アプリの通知かな?と思い、ランチタイム振りに見たスマホ画面には、佐伯さんからの着信が数件。
うわっ…やってしまった。と思い直ぐ様リダイヤル。
「もしもし!ごめんなさいっ今気付きましたって‼︎」
相手の声を遮る様に慌てて謝れば、スピーカー越しにくすくすと笑い声が聴こえてくる。
「....佐伯さん?」
「あーごめん。必死すぎで面白かった。」
「ほんとごめんなさい。どうしました?」
「いや、朝連絡するねって言ったのに、俺も仕事詰まっててやっと連絡したんだけど、出ないから心配になったところ。もう家?」
「....いや、それが....まだ会社なんですよ。」
「え?残業だったの?ちょっと待ってて、」
そう言い残して、通話が切られてしまった。
そう言えば、連絡してくるって約束してたなと今思い出す。不意打ちのクレームの所為ですっかり忘れてたよ。
気を取り直して荷物を纏めて帰り支度を終えようとした時、廊下から足音が聞こえてきた。
薄暗い廊下からひょっこりと顔を出したのは佐伯さん。
「高野お待たせ。俺も丁度帰るところだったよ。」
「わあ、サプライズみたいですね。」
「一緒に帰ろ?」
「....はいっ。」
まさかの偶然に、また私はときめいてしまう。
急いで鞄を持って、佐伯さんの方へと駆け寄ると、「遅くまでご苦労様。」王子に頭を撫でられた。
私はただの後輩。でも一応は、元部下。
ねえ、佐伯さん....これは私に気があるって事で間違いないですか?
そんな事は聞かないし、訊くのは恥ずかしい。もしも違ったら....と思うと、勘違いしてた場合を考えたら凄く痛い女だ。
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