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朝の天気予報は見事に的中。事務所から見ていた時よりも少し大粒になった結晶が私たちに降り掛かる。
外はやけに物静かで、互いの呼吸が鮮明に聴こえてくると、妙に恥ずかしい。
肩を並べて途中までの道のりを歩いていれば、この沈黙を破ったのは佐伯さんの方だった。
私よりも頭一個分は大きな身長、極寒の中で私たちはお互い手はポケットの中。
「雪、積もりそうだな。」
「はい。そうですねぇ。」
「帰り滑らないように気を付けろよ?」
「佐伯さんこそ....。」
もしも明日積もっていたら、小さな雪だるまを作って事務所に持って行こう。山田さんのデスクに置いて、サプライズという名の嫌がらせをするんだ。
ニシシと悪戯を企てていれば、「明日仕事終わったら暇?」と尋ねられた。
暇かと問われれば、何も予定が無いから暇だ。それに明日は金曜日....。
「なんでです?」
「ご飯でもどうかな?って....」
「それじゃあ、明日山田さんにも声掛けときますね。あの人いつも暇そうだし、」
「いや、....二人が良いんだけど。」
これは聞き間違いなどではない。
だって、気付いたら私は佐伯さんを通り越していて、ふいっと振り返って彼の表情を見れば、それは一目瞭然だった。
「....駄目かな?」
駄目かなんて、その訊き方は狡いじゃないか。
私は緊張していたが、平然を装って了承した。
丁度居た場所は別れ道。駅までは行かない私は、佐伯さんに挨拶して路地を曲がった。
浮かれ半分で進む帰路。寒いのに幸せな気持ちでいっぱいな私は、気持ちが昂っていた。
明日も仕事頑張れそうだ。そんな気分。
その翌日、積雪での被害情報と共に流れ込んできた別のニュースに、目を疑った。
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