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一瞬だけ捉えた奴等の風貌は、俺たちと大した差は無いが、明らかに不利な状況。
これまでの経験から察するに、その男の声色からは敵意しか感じられない。
「....おい、創士さんが声掛けてんだからこっち向けよ。」
そして程なくして加わるのは、恐らく下っ端のもの。
無視して去ろうと思っていたが、俺は足を止めて振り返る。
「なんすか。」
ビビってる事を悟られまいと、虚勢を張りながら幾つも並ぶ俺たちへの視線を流し見る。
今日はドライブ日和で、暑いからと脱いだシャツは車内に在る。
タンクトップから伸びる俺の腕っぷしよりも、遥かにがたい違いの奴等に、勝てる見込みは一ミリだってない。
だがしかし、俺の態度が気に食わなかったらしい一番近くに座っていた野郎が、ガタンと物音を立てながら立ち上がる。
恐らく二言目の声の正体だ。そいつの額には血管が浮き上がっており、俺はこの場所に来てしまった事を後悔してしまった。
背後には高校のダチ。こいつは俺とは違って不良ではない見た目。
喧嘩なんて姿を見た事がない、ただ気の合うダチだった。
目の前には総数にして二十人近い顔触れ…袋を覚悟しつつも、『すまねー』と心の中でダチに手を合わせる。
「オメェ等、創士さんに舐めた態度取りやがって、生きて帰れると思うなよ」
いつの間にか間を詰められ、男の唾が掛かった。
体格差はそこまで無い一番下っ端っぽい奴だが、何せ背後の奴等を見て終えば、こいつを伸したところで逆鱗に触れること間違いなし…
「すんません。俺等、遠くから遊びに来てたもんで....」
チラリと背後を気にしながら、誰が創士って男なのか確認しようと平謝りしつつ目を配らせる。
すると、「おう、そうか....だったら分かんねーのも納得だな。」
そう言を発したのは、奥のはじの席に座っていた....この中で一番の男前。
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