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新天地での孤独の始まり。だがしかし、そこには憧れの男が居る。
あの日、初めて出会った事が運命だったのか。
それとも、その後再会した事が天命なのか....。
安定と引き換えにつまらない日常を捨て、若松 創士という憧れを追う権利を得た。
「改めて、俺は深瀬 透です。」
「そしたら、俺は....ヤクザ、千種会若頭若松 創士だ。」
酒月ではなく交わしたのは、湯呑みに入った茶。
俺は....直ぐに工事を辞めて、千種会というヤクザ者に転身した。
「透、俺にもしもの事があった時は、お前が俺の跡を継げ。」
約十年間....俺は若頭、若松 創士の弟分として、組織内の舎弟頭にまで上り詰めていた。
そんな途中に俺が気付いてしまったこと....
会長の息子である創士。その会長とやらが、昔見た実家の箪笥に眠っていた写真の人物だと気付く。
創士と初めて会った時に感じた既視感の正体は、これだったのか....。
この事実は、創士にも分かっていた事なのだろうか....
「俺の弟がお前で良かった。」
俺のお袋は、会長の元愛人。創士の母親は本妻。もう何年も前に亡くなってしまったらしい。
だがしかし、俺たちは生い立ちが違かろうと、弟分という立場よりもより深い、腹違いの兄弟だった。
「ーーー…陌間が裏切りやがった。」
六年前の悲劇。組織内で分裂し掛けていた派閥のぶつかり合いは、複数名の死傷者を出して、一時幕を閉じた。
....俺の兄貴は亡くなった。
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