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「山田さん、今日は残業無しでお願いします。」  昼休憩の終わり、山田さんを飲みに誘った。さっぱりした頭を凝視しながら、グラスを傾けるハンドサインを送ってやった。  きっと五年振り....否、初めてかもしれない。  すると山田さんは、私の言葉が幻聴だと思ったらしく、無反応で業務に戻ってしまう。 「禿げ田(は だ)さん飲みいきましょ?」 「まさか、それは俺に言ってるのか?」  ここでやっと気が付いた禿げ田さん基、山田さんは少し怒ってるっぽいのだが、それに反して鼻の穴がひくついていた。なんて分かりやすい男なんだ。  興奮モード顔面セクハラ禿げオヤジ(※モザイク規制有)が目で訴えかける。 冗談ではないよな?と....そして指をさしながら、因みに(や・ま・だ)と口パクで訴えていた。      まあ疑うのも無理は無い。この間、ウザイだのキモいだの禿げだの罵って....否、禿げは今日からだったか。まあそんな事はどうでもいいんだけど、ずっとお誘いを断ってきた私が、手のひら返した様に、自分から誘う事になるなんて....これが自由ってやつなのか。  でも、身近で飲みに誘えるのが、この男しか居ないってのもな〜。と、私は未だに気持ち悪い山田さんの顔から視線を逸らして、午前の続きへと取り掛かった。  
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