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結局いつもみたく三人になると、佐伯さんは「山田あんま高野いじめるなよ?」と私の味方になってくれる。
それを聞いた山田さんは、「おいおい、いじめられてんの俺だからな?」と被害者ぶる。....まあそうなんだけど、暴力は反対だ。
結局その場で立ち往生して話し込んでいるこの時間が、とても心地良かったりする。
「てか、今日彼女とデートだろ?」
「あぁ....待ち合わせてる。」
今まで何となく耳に挟んではいた佐伯さんの女事情。
こんなにイケメンだから彼女が居ても可笑しくはない。そして私は興味津々なのである。
「私、佐伯さんの彼女さんに会ってみたいです。」
この人がどんな女性とお付き合いしているのか....気になってしまうのは女の性?
でも本当は現実を見たくないのも事実だ。
矛盾してるのはきっと、佐伯さんのことが好きになってるからなのだと思う。
「それはちょっと....なぁ....。」
感触はいまいち。あんまり見せない曇った表情に違和感を抱く。
「佐伯の彼女見たら、高野のへなちょこっぷりが悪目立ちするから、ここは大人しく帰ろうぜ?それとも俺と一杯かますか?」
すかさず間に入ってきた山田さんが、私の肩を無理矢理抱くと、そのまま強制連行されてしまった。
「ちょっと、なんなんですか!」
「....シー。」
佐伯さんに挨拶も出来ず、そのまま真横を通り過ぎると、吠える私に山田さんは唇に人差しを押し当てて静かにしろと訴えていた。
訳が分からず混乱していると、山田さんは目線を正面に向け、「アレだよ。」と小声で教えてきた。
なんなのよ。と不機嫌になりながら、言われた通りに前を向けば、とても綺麗な女性が一直線に向かってくる。
その歩き姿はモデルにも見えて、女の私でも惚れ惚れしてしまいそうだった。
少し汗ばむ気温に、露出度の高めのワンピース。脚はしなやかに動き、ギャラリーの視線がその女性に向くのは当たり前だ。
私は、まさか!と山田さんの顔を見上げる。
「そのまさか、だよ。」
「えっ、ぇえ⁉︎」
「ほら、見ただろ?さっさと行くぞ。」
その時既に山田さんは私の気持ちに気付いていたのだろうか。へなちょこと美人。王子様の隣にはお姫様....それが一番しっくりくる構図だ。
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