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佐伯さんが戻るまで気が気じゃなかった。置き上がるなとは言われたが、気になって布団を引っぺがす。
枕元に置いてあった鞄の中を漁り、スマホを見つけると山田さんからのメッセージが一件入っていた。
『間違っても佐伯を襲うなよ?』
「―――…って、出来るかいっ!」
バスっと布団の上に投げつけたスマホ。あぁなんてことだ。これで佐伯さんが戻ってきたら、密室に二人っきりじゃんかと改めて自覚してしまう。
てか、「プリン」が欲しいだなんて....絶対にお子ちゃまだって笑われてるかもしれない。
それにさっきの口振りだと、冷蔵庫の中は見られてるし、酒だらけでだらしのない女だと思われているかもしれない。
私の馬鹿。どうして会社で倒れてしまったんだ。そして山田さんめ....佐伯さんを召喚するなんて狡いじゃないか。
そうこう考えていると、時間はあっという間に過ぎていき、買い物に出かけていた佐伯さんが遂に戻ってきてしまった。高野 友里絶体絶命のピンチ?
両手に持ったビニール袋には大量の某スポーツ用清涼飲料水と、飲むゼリー類に解熱剤。
そして....「どれが好みか分からなかったから適当に買ってきちゃったよ?」と横になる私の傍で足を崩しながら数種類のプリンを取り出した。
「ほんとーに申し訳ないです。もうなんて謝ればいいのか....。」
「ふっ....とりあえず落ち着きなよ。倒れたって連絡来た時は流石に吃驚したけど....でも、こんな状況なのに高野と二人っきりで嬉しいって思ってるんだよな....あー。やっぱ今の聞かなかったことにして?今の俺変だわ。」
思わず目が点になった。これは熱による幻聴なのだろうか。でも、見る見るうちに佐伯さんの頬が真っ赤に染まっていく。
「――――…今なんて、」
「....正直に言うと、高野と二人っきりで良い意味で緊張してしまっているというか....。」
「....はい。それでそれで?」
「もう....恥ずかしいから見つめてくんな。」
本当に照れているのか、私から顔を背けたけど、耳も真っ赤になっていた。やばい....なんだこの可愛い生き物は!
「早くこれ食べて薬飲んで。まだ熱あるでしょ。」
ついつい調子に乗ってたら、佐伯さんは咳払いをしながらスプーンを差し出してきた。
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