百合田メロ

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明くる日。 「美佳おはよー」 「おはよー。あれ、萌」 「ん?どうした?」 「いや、うん。気のせいかな。何でもない」 「そう?」 「うん」 なんだろう。 朝礼後。 1限の体育で教室移動が始まる前に、隆世がわたしに近づいてきたところから、憂鬱な午前が始まった。 「あれー、今井どうしたのその鼻?まるでピカソの泣く女みたいだけど、意識してやってんの?」 わたしの体にゾワっという感覚が流れると同時に、教室の雑音が一段とザワっとしたことが感じ取れた。 「ちょっとたかはしくん?男子は2組で着替えでしょ。早く教室から出てってよ」 美佳が反撃をする。 泣く女。カクカクの鼻をしたピカソの絵。 「いやー流石にそのノーズシャドウはないでしょ。それにその色もなんか不自然」 「おい……」 「隆世ー。早く着替えに行こうぜー」 「うぇーいっす」 翔太くんが隆世とともに教室を出ていく。 わたしを救ってくれたわけではないのだろう。 翔太くんは単に体育が待ちきれなさそうな顔をしていた。 「萌、だいじょうぶ?」 「うん……。……ごめん。先着替えて校庭行ってて」 「わかった……」 わたしはただただ立ち尽くしているしかなかった。 続々と他の女子生徒が着替えて校庭へと出ていっても、わたしのからだが動くことはなかった。 わたしの体が動くようになったのは、教室にひとりだけ生徒が残っていることに気が付いたタイミングだった。 ……。百合田メロ。最後まで教室に残っていたのは彼女だった。 もうすぐ授業が始まるってのに、百合田さんは着替えを始めるそぶりを見せなかった。 まだ心が癒えるのに時間がかかると判断したわたしは、教室が一時しのぎの場所に使えないと判断すると、保健室へ向かい、不貞寝で体育をサボるのだった。
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