0人が本棚に入れています
本棚に追加
1カ月後。
秋と冬の狭間で、わたしは原宿駅前で美佳を待っていた。
……もう集合時間なんだけどな。
既読のつかない美佳のスマホあてに3分間発信を続ける。が、出ない。
反応があったのは3分後。
『ごめん寝坊……』
『だろうと思った』
『目覚ましコールありがと!』
『あとどんくらいかかりそう?』
『ごめん2時間くらいかかりそう。さきに時間潰しててください。』
『りー』
慣れっこ慣れっこ。人間は眠気に勝てない。
さて。空いた時間。原宿に来たなら、行きたいお店があった。
美佳と一緒だと行けないと思い、今日のリストから外していたいあのお店。行ってみるかあ。
美佳がまだ来るはずもない改札を一瞥して、横断歩道に足を……。
あれ、あの驚きの白さは……。
百合田さんだ。
百合田さんは、みるからに男にナンパされていた。
思わずわたしは物陰に隠れて様子を見る。
百合田さんは転校初日に教室で見かけた顔と、同じ顔をして対応していた。
3分。
5分。
10分。
……ナンパ、終わらない。
流石の百合田さんにも疲労の表情が見えてきた。
あんな表情するんだ。
……。
ツカツカツカツカ。
「あの、すみません」
「ん、キミ何。この子の友達?」
「いや、その」
「いま忙しいからよそいってくんね?」
「あの!!!」
気がついたら大声を出していた。
「わたしの彼女に手ださないでください!!!」
「……」
「その子はそんな表情してないけど」
「うるさい!!!だまれ!!」
わたしの手は、気が付く間もないうちにシルクの純真無垢な左手をつかんでいた。
そして、その手の握力が緩むのを感じ、彼女が地面に崩れ落ちる姿を見た後、ドンっという音が耳に届いた。
「ちょっと……百合田さん大丈夫?百合田さん!?」
「あー……。失礼するわ」
めんどくさいことになりそうなことを察知した男は足早にその場から去っていった。
より一層白くなった百合田さんとわたしをおいて。
最初のコメントを投稿しよう!