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目が覚めた。
まだ起き上がりたくない一心で、昨夜充電したまま眠った携帯へ手を伸ばす。
「6時50分か。」
目覚ましに設定している時間より僅かに早い目覚めだった。
カーテンを開き外を眺めて、自分の頬に触れてみる。
「涙…。」
1月程前からだったろうか、この悪夢を見るようになったのは。
自分が見知らぬ河原で1人の少女と対峙している。
背格好は妹にそっくりの少女だが、夢の中の少女は金髪といって良いほどに明るい髪をしていた。
少女が涙を流しながら何かを少年に伝える。
少女の言葉は電波障害のような雑音にたびたびかき消される。
会話の内容もわからぬまま、ただ自分の中にある感情は『悲しい』という感情だった。
涙を流しながらの少しの問答のあと、少女は踵を返し少年とは逆方向へと消えていった。
何度も見慣れた夢。
見る度に少しずつ鮮明になっていく夢。
「また…この夢か…。」
4月という過ごしやすい季節の中。
シャツは汗でぐっしょりと濡れていた。
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