日常の始まり

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「とーこーろーでーさー。」 出発してからわずか3分足らずで美羽の口から発せられる。 「お前さ…。 タイミング伺ってたろ? 下手すると今日一緒行こうなんて言ったのもそれが目当てか?」 「うーん、違うと違わないの真ん中くらい…?」 はにかみながら美羽が言う。 「なんだよそれ…。」 「いいのいいの気にしない!でさ、彼女できた? ずっと気になってたの!」 出た。 素直にそう思った。 「…いない。 追撃するつもりだろうから先に答えておくけど、小中もそういうのは一切なしだ。」 隠していてもなので正直に答える。 「えー、そうなんだ! お兄ちゃんわりかしイケメンなのにー! みんなわかってませんねー!」 「わりかしってなんだよ、わりかしって! んで、そういうお前はどうなんだよ?」 俺のその言葉に美羽がハッとした顔をする。 「やっぱ聞いちゃう?」 「そりゃ聞くよ。 そもそも先に聞いてきたのそっちだからな?」 「だよねー。うん、わたしもないよ。 小学校からずーっと。」 その返答は少し意外だった。 自分が興味がないだけでそういう事のひとつやふたつあるだろうとばかり思っていた。 「へー。お前こそもてそうなのにな。」 「あー、告白されたりとかはちょいちょい…ね? でも、付き合ったりとかそういうの良くわからないんだよねー。」 一瞬、そう言った美羽の顔が曇ったような気がした。 「ん?なにかあ…」 そう言いかけた時だった。 「おおー! ここがお兄ちゃんの、そして今日からわたしの学校かー。」 そう言った美羽の顔からは先ほどの曇りは窺えない。 「お兄ちゃん、わたしが友達できるまでは一緒帰ろうね?」 「ああ、わかった。」 「ふふ、ありがと。 それじゃわたし行ってくるね!」 そう言うのが先か美羽はもう駆け出していた。 一瞬見えた曇り顔が気になりつつも、俺も自分の教室へと向かった。
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