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屋上、眼前には青空が広がっている。
「俺は本当に大馬鹿者だ…。」
寝そべった体勢から少し身体を起こし体育館の方向へと目をやる。
体育館内からはマイクを通した教師の声が微かに聞こえる。
今、体育館で行われているのは対面式というものだ。
美羽は入学試験での成績が優秀だとかで、もう間も無く新入生代表の挨拶をする予定のようだ。
そんな全校生徒が体育館へと集まっている中、俺はというと誰もいない屋上で寝そべって空を見つめていた。
いつからだろうか、こうして時間を過ごす事が多くなった。
友達だと呼べるような相手がいないわけでもないし、校則に反抗しようと息巻いているわけでもない。
集団の中だと息がつまる、ただそれだけだ。
ふいに頭の中に自分を悩ませるあの夢の事が浮かんだ。
モノクロではじまったあの日から、日々色を増していく夢。
雑音で会話の内容まではわからないが、口元の動きから言葉を察する。
『ごめんね、私はもうあなたと一緒にいることはできない。
彼を…。ーーーと一緒にいる。』
その言葉を小さく自分で呟いてみる。
「これって…。もしかして、俺単に振られただけなんじゃないか?
振られて悲しくて泣くとかそういうことか?」
ずっと悩まされていた夢に一つのオチが付き、無性に笑いが込み上げた。
「帰ってから追及されても面倒だし、美羽の挨拶だけは聞きにいくか。」
そう決めて体勢を起こして起き上がった時、先ほどまではなかった違和感を感じた。
視線の先、屋上の柵の向こう側に一人の少女が立っていた。
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