彼女の仇討ち紀行

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sayu@ご報告 少し時間が空いてしまいました。ごめんなさい。 現場と地元の自治体に事後の届けを出さなければならなくて。 すっかりバタバタしていましたが、なんとかこなすことができました。全て師範のおかげです。 師範…タカヒロさんが来てくれたときの気持ちは、ここには書ききれません。 色々あったけれど、これでようやく自分の人生に向き合えるようになりました。 私は、タカヒロさんと幸せになります。 本当にありがとうございました。 ――おめでとう!!!本当におめでとう!!!! ――リア充滅びろ。でも泣いた ――前から師範とは怪しいと疑ってました(笑い)恋愛も解禁ですね!!おめでとう!!! >コメント一覧を表示(1,023)  なんだろう、これは。閲覧早々、早柚と『師範』もといタカヒロさんとやらのツーショットにビンタされたぼくの心を、今この瞬間にも怒涛の勢いで上昇していくコメント群が無限にぶん殴っていく。 「いやあ、師範イケメンっすねぇ〜。sayuさんの家庭事情も知った上で、生活もメンタルも全部ケアしてくれて、最後には命までかけてくれる。これで好きにならなきゃウソですよねぇ」  後輩の言葉がとどめとなり、ぼくは立ち上がった。 「ごめん、ちょっと」  ひとりになりたい。そのとき照明が点灯し、勤務時間が始まった。反射的に座ってしまう。 「はあ、なんか幸せすぎて、働くのがダルいっすねー」  何も知らない後輩の横で、頭の奥からぼくらはとっくに終わっていたのだという事実がせり上がってきた。結局、傍観者でしかなかったという実感。  ぼくはアプリを削除した。アイコンはしゅーんと縮んでなくなり、早柚の人生の一部がぼくのスマホから去っていった。
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