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遊歩道の真ん中あたりにさしかかった時、公園の小高い丘の上で一人膝を抱えて座っている見知らぬ男の子をみつけた。口をぎゅっと真横に引き結んで何か怖いものでもみたかのように険しい顔で一点を見つめている。
同い年ぐらいかなぁとぼんやりその姿を見ていたら、男の子が見上げている私に気がつくなりバッタが跳ねるみたいに飛び上がったかと思うと丘の上から全速力で駆け下りてきて私の両肩を掴んだ。
男の子に吐息がかかりそうなくらいの至近距離から見つめられたことは初めてだったので、胸の奥が大きく跳ねた。きらきらした瞳が真っ直ぐに私を見つめている。
「ねえ、きみ、スーパーボール、みなかった?」
「え?」
「さっきここから投げたんだけど、どこかに転がって行っちゃって見つからなくて」
「どこに向かって投げたの?」
「宇宙」
男の子はまっすぐに真っ白い冬の空を指し示した。宇宙って。そんな高いところまで飛ぶわけない。なんだかおかしくなった。けれど男の子はいたって真面目な顔つきで空をにらんでいる。
「どんなスーパーボールなの?」
「透明で中にきらきらってした金と銀の星が閉じ込められているんだ」
「その星を宇宙に帰してあげるのね」
そう返したら、男の子は目を細めて笑った。
「違うよ。その星に願いを叶えてもらうんだ」
「願い?」
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