殺す相手を間違えました

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殺す相手を間違えました

「ぐわあぁぁぁ!!」  ――金曜日、23時。  暗闇の中、断末魔がこだまする。声の主は、背中から血を吹き出す。斧で叩き切られたのだ。その場から逃げようとするも、体が思うように動かない。  続けざまに、斧の一撃を食らう。今度は脳天だ。その一撃で、声の主は完全に動かなくなった。そんな声の主を、血が赤黒く染める。 「はぁ、はぁ」  僕はやり遂げたという達成感と共に、高揚感を覚えた。斧で叩き切った時の感触が手に残っている。当然、斧と握っている手は血まみれだ。 「……もう、帰ろうかな」  今日は一人で満足したので、帰ることに決めた。一人で済んだのはラッキーだ。今週、嫌な目に合わなかったのも大きいんだろう。  なにせ、この前の金曜日はむしゃくしゃしてたようで、一晩で10人も殺したからね。よく10人も殺せたなぁ。やっぱり、僕は凄いや。  僕は斧を布に包み、バッグに入れる。辺りを見回し、人がいないことを確認した後、人目を忍ぶように家路に着く。  ――僕は、金曜日の夜になると、人を殺したくなる衝動に駆られるようになった。最初はただの気まぐれだったのだが、今は違う。とにかく、人を殺さないと気がすまないのだ。  これは病気なんだろうか。でも、もし病気だとしても、これは治せるのだろうか? どうせ、まともに取り合ってくれないだろう。  それに、悪いことばかりでは無い。  まず、傷の治りが早くなった。致命傷を負っても、瞬く間に治るかもしれない。痛いのは嫌なので試したことはないけど。  なにより、僕は強くなったのだ。これは気の持ちようではない。実際に強くなったんだ。僕は腕力だけじゃなく、体力も増しているし、反射神経も良くなっている。  きっと、僕の身体能力は人間のそれを超えつつあるはずだ。僕は化け物になってしまったのだろうか……。  とにかく、僕は強くなったのだ。これは復讐なのだ! 僕を虐げてきた連中に、思い知らせてやる!!
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