4.朝のきせき

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虹が消えるとふふっと一ノ瀬くんが笑う。 「宮田さんと一緒に虹見るの、二回目?ああ、でも別の場所で見たのもあるから三回目か」 一回目は隣のビルから一ノ瀬くんが教えてくれて一緒に見て。二回目は別々だったけど同じ虹を違う場所で見たことをコンビニで聞いて。三回目はいま見た白い虹。こんなに短期間で一緒に虹を見るなんて。 (これってもう運命なのか?) まるで少女マンガの主人公のようなことを考えてしまって、自分ながら恥ずかしいヤツと思ったけど… 一ノ瀬くんの笑顔が眩しくて、目が眩む。 ああもう、ダメだ。自分の気持ちをいま、伝えたい。 「あのさ、一ノ瀬くん」 「なに?」 「…俺さ、こうやって一緒に話できるようになって嬉しいんだ」 「僕も!だって宮田さん面白いし」 「ありがとう。でも俺は、もっと一ノ瀬くんのこと知りたいし、一緒にいたいんだ」 「うん?」 俺は隣に立つ彼を見つめながら、その手を握る。 「俺、一ノ瀬くんが好きなんだ。友達じゃなくて恋愛対象として」 それを聞いて一ノ瀬くんは驚いたように目を見開いた。そりゃ、驚くよな…。でも言い切った俺はなんだか胸の支えが取れたような気持ち。 「ごめんな、気持ち悪いだろ。これ言ったら、もう休憩時間に会えなくなるかなって思ってなかなか言えなかったんだ。せっかくこうして話できるようになったのに。でも、もう言わずにいられなくてさ」 俺も一ノ瀬くんも、恋愛対象は女性の、いわゆるノンケ同士。そんな二人が付き合っていけるなんて安易には思えないのはわかっている。 気軽にできない恋だと、分かっているけど三回も一緒に虹を見たんだ。もしかしたら奇跡が起こるのかもしれないなんて。高木が聞いたら笑うだろうか。 「…宮田さんは彼女がいたんだよね?」 「うん。でもさ、いつも彼女たちから言われて付き合ってただけで」 「それ、最悪だ」 一ノ瀬が苦笑したので、俺も笑う。 「それについては反省してます…。だけど、そんな俺が一緒にいたいなって思ったのは一ノ瀬くんが初めてなんだ。高市と大宮が一緒に仲良くしてるのを見て、一ノ瀬くんとそうなりたいって思って」 「……」 彼は俺から視線を外し、俯いてしまった。ただそれだけのことなのに、胸が抉られるように痛くなる。ああ、やっぱり無理だったんだろうか。 しばらくの沈黙。木々の葉っぱが風にそよぐ音だけがいやに耳にこだまする。 俺は一ノ瀬くんの手を離し、少しだけ離れた。 「ごめんな、せっかく仲良くしてくれてたのに」 そう言うと、彼は顔を上げ俺の方を見た。
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