通・心

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通・心

月曜日。夢羅は仕事が休みだった。朝目覚まし時計を掛けずに自然と目が覚め昨晩飲んだ睡眠導入剤のお陰でさぞかし沢山眠る事が出来たのだろうと期待を込めつつスマホの画面を見る。沢山眠れたと言っても夢羅の場合はほんの僅かな時間を沢山と言っているに過ぎない。だが画面を見てガックリとしてしまう。普段起きる時間よりも早く目が覚めた事に。 ───何だ。何時もと変わらないや。しかも少し早起きなんて休日なのにやになる。 このままベッドで二度寝を試みても夢羅からしたら時間の無駄使いだと分かっているので仕方が無く起きて顔を洗い歯も磨いてコーヒーをいれテーブルに肘をつきながら啜っていく。 ───こんな朝から起きちゃって何をしようかな…まだ外だって薄暗いし。月曜に遊んでくれる友達もつかまらないしな。 夢羅の働く飲食業は平日休みが割と多い為折角の休みが取れても平日に当たってしまえばOLの友達とはなかなか約束が出来ない。それなので休日を一人で過ごす日が多くなっていた。 コーヒーを啜りながらふとサイドテーブルに置かれた箱に目をやる。 ───明日が休みだから沢山寝ようと思って続けて飲みたくは無かったけど飲んだのに変わらなかった。依瑠が居てくれたらな…。 あの日夢羅は依瑠に会い羽瑠との件もそうだが依瑠に対して自分の気持ちの全てを打ち明けずにいるこの状況が何とも歯がゆく思っていた。 ───依瑠。考えれば考える程会いたくなる。大人になった依瑠とはまだ話さなければならない。二人の仲違いを少しでも解きたい…そんな風に思う私は単なるお節介?それもそうだしけど、私の心が強く依瑠を求めているから。続けて飲んでしまった今夜は流石に服用は避けたい。そうだ…今夜あのお店に行けば依瑠が居る。ちょっと勇気が必要だけど依瑠に会いに行こう…。 そう思い立った夢羅は何も疑問に思う事無く依瑠の働くあの店に行くとすっかりその気になっていた。だが依瑠にも勿論休みはある。大体の人ならば先ず相手が出勤しているかどうかの確認を取ったりするが夢羅は端っからそれは頭には無く依瑠が出勤していると思い込んでいた。そんな夢羅はまるで事前に依瑠とやり取りでもしていたかの様なそんな確信的な雰囲気を纏っていた。 ────────。 平日だと言うのにこの夜の街は人々で賑わっていた。見上げてみれば目が痛くなる様な強めのライトがあちらこちらから放たれ断っても断ってもしつこい位に水商売やら風俗のスカウトマンに声を掛けられる。夢羅は始めての事に困惑しながらも謙虚に断りながら先へと進んで行く。人混みを避けながら暫く歩いていくと黒地にゴールドの文字で CLUB SHINと書かれた看板が目に留まった。夢羅は足を止め入り口の前で店全体を見上げていく。 ───ここが依瑠の働いているCLUB SHINか。何だか初めてでよく分からないけど中には依瑠が居るんだもんね。よし、行こう。 肩に掛けていた鞄の持ち手をギュッと握り締めいざ夜の世界へと足を踏み入れていく夢羅。間接照明の薄暗い通路を歩いて行くと壁にずらりと店のホストの写真が飾られておりそれぞれに源氏名が書かれてもいた。 ───鏡也…礼音…夏樹…それにHAL。 一歩一歩写真を見ながら歩を進めて行くと一番大きな額縁に収まる依瑠の写真を見つけた。 ───依瑠…大きいって事はつまりNo.1ホストなのかな…。だとしたら凄いや。私一応カードも現金も下ろして来たけど依瑠を指名して高かったりしたらどうしよう。 「いらっしゃいませ。」 そんな事を考えていると横から黒服のスタッフが夢羅に声を掛けてきた。
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