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 パラシュートを忘れて飛び降りた人間が居るんだが……なんとかしてくれ。 「ラジャー!!」  からいきなり無理難題を押し付けられたボク。  空は飛べるけど、フリーフォールで内臓が浮かび上がるあの感覚は出来れば味わいたくないなあ。まあ、文句を言っても仕方がないからやりますけど。  だって、ボクも生活がかかってますから。少々嫌な案件でも、受けなきゃ誰かに取られてしまいますので。そこが給料完全歩合制の辛いところですよ、まったく。    さてと、そろそろ指定の場所だ。  パラシュートを忘れて飛び降りるなんて、果たしてどんな顔してるのやら。きっと真っ青になってるに違いない。  お、いたいた。  どれどれ。あれれ、意外にも楽しんでるみたい。そうか、まだ気がついてないだけか。  と、言う事でお仕事お仕事。  「こんにちは、ボクこういうものです! あなたの忘れ物をお届けに参りました」  差し出した名刺が落下の風圧で飛ばされてしまったから、ボクは首からぶら下げてるパスケースの社員証を見せた。  そうですよね、あなた普通です。これを見て「ああ、そうですか」とはなりませんよね。普通はあなたみたいにキョトンとなります。  だからちゃんと教えてあげるのがボクの役目なのです。  可哀想だけど。 「申し上げにくいのですがあなた、既に死んでますよ」  そうです。  ボクは死んでいることを忘れているヒトに「既に死んでますよ」と伝えて、成仏して頂く伝導死士(でんどうしし)という仕事をしているのです。  そりゃ、色々苦労もありますよ。  大抵はこのヒトみたいにパニックになりますし、暴れたりもされます。素直に着いてきてくれません。そんな時は、仕方ありませんがもう一度、死を再現させて頂くのです。  ほら、もうすぐ地面が……あぁ。  何が大変って、こうなった時の後始末が面倒なんですよ。 「さ、では参りましょうか。迷える魂達よ」
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