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「ねぇ、遥。あの子、良いと思わない?」
優は次期生徒会長に立候補したメンバーの一人を見て私に言う。
「真面目そうな子だね」
「たぶんあの子なら大丈夫な気がする」
まったく。優の目は節穴だろうか。あの子だって優に近づきたいと狙っている女子の一人だ。他の人にはわからなくても、副会長という立場上、優と一緒にいることの多い私にはわかる。
「大丈夫かは知らないけど、消去法であの子に決まりそうだね」
他の立候補者はギラギラしすぎている。下心が見え見えというか、会長の仕事をきちんとやるのか怪しい感じがする。その点、優が言った小谷さんとやらは、うまくそれを隠しているように思えた。
「成績も上位らしいよ」
それもきっと会長になるための準備のひとつだろう。なぜならそれがこの高校で周囲を黙らせるのに一番有効だから。それは私が身をもって体験している。学年一位の成績をキープしていれば、優の横にいてもさほどやっかまれない。
ただ、優が敢えてそんなふうに言ってくるということは、彼女を勝たせたいのだろう。皆まで言わずともわかる。
「はいはい、わかった。それとなく周りを誘導すればいいのね?」
「さすが! 遥は頼りになる副会長だ」
見事当選した暁には、彼女はきっと自分の力で生徒会長になったと思うのだろう。少々納得いかない気もするけど、優が望むのなら仕方ない。私だって所詮、優のファンのひとりに過ぎない。希望ならば従う他ない。
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