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皇祐は、敦貴の部屋に来ていた。
初めて敦貴の部屋に入ったが、けっこう片づけられていることが意外に思えた。
皇祐が来るから掃除をしたと言っていたけど、それにしても物が少ないのか、きれいになっている。
「適当に座っていいよ。福田が言うにはさ、はじめてのキスは、どちらかの家の方がハードル低くていいんだって」
「そうなんだ」
敦貴は、ジュースと山盛りになったお菓子をテーブルの上に置いた。そして、皇祐が座っている隣に来て、即座にお菓子を口に頬張る。
「コウちゃんも、食べていいよ」
「ありがとう。だけど、彼女とキスする前に、お菓子は食べない方がいいんじゃないのか? いや、あまり気にしなくていいのかな」
「あっ! そうだよね。えー、じゃあ、キスする前って何も食べちゃいけないの? それとも歯磨きしてから? 面倒だな」
「福田くんは何て?」
「聞かなかった。でも、ファーストキスはイチゴの味がしたとか言うよね」
「そうなんだ。イチゴを食べたらいいのか?」
「今、イチゴないよ。あ、このチョコはイチゴ味だけど。これ食べたらいい?」
「今回は練習だから本当にするわけじゃないだろ。彼女とする時は、イチゴを用意したら?」
「そうする~」
そう言って敦貴は、再びお菓子を口の中に頬張る。
皇祐は少し緊張していた。今、自分で言ったように、練習で本当にするわけじゃない。だが、経験がない以上、どうしていいかわからなくて落ち着かなかった。
ふと、敦貴と視線が交わってしまい、思わず俯いてしまう。
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