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 春の日差しが降り注ぐ学校の中庭に、楽しそうな笑い声が響き渡っていた。そんな笑い声に合わせるようにして、暖かい風が芝生を吹き抜ける。  その場所で、仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は一人、お弁当を食べていた。  高校入学してから、一ヶ月が経とうとしている。クラスの中でも、気の合う同士が集まったグループのようなものが出来上がっていく頃だ。  皇祐も、入学式に新入生代表として挨拶をしたおかげもあって、クラスのみんなに声をかけられた。毎日、机の周りに人が集まってくるのだ。  裕福な家庭で育っていた皇祐は、中学の頃にはそのイメージが大きく印象づいていた。高校でも、それを知っている人が話題に出すものだから、余計に好奇心が煽られ、あらゆることをみんな聞いてくる。  家のことは、あまり触れられたくないことだった。だけど、切り抜ける方法がわからなかった。どちらかというと人と会話するのは苦手で、うまく話せる自信がない。  皇祐は、その場をやり過ごすよう曖昧に答えた。そして、これ以上質問攻めにあいたくなかったから、回避するために、みんなから距離を置くようにした。  そのうち、飽きたのか、周りに人が集まることはなくなった。用がない限り、話しかけられることもない。  代わりに、感じが悪いだの、お高くとまっているなどと、かげ口を叩かれた。そして、皇祐はクラスで浮いた存在になり、孤立していった。  それで良かったと思っていた。  人と一緒にいるのは、わずらわしい。  そう感じていたから、一人でいることが楽だった。  勉学に励むため学校に来ているのだから、他には何も必要のないこと。  父親にも、そう厳しく教えられていた。
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