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それからしばらくして、放課後、ファミレスしゃぼん玉に寄った時だった。敦貴はさらっと言う。
「美咲ちゃんに好きって言われて付き合うことになった」
「急展開だな」
けっこうな重大ニュースだと思うが、敦貴の中ではそうではないのだろうか。
「どこに付き合えばいいんだろ」
「ん?」
「付き合ってくださいって言われたから、いいよって答えたんだけど、どこに付き合えばいいか言ってなかった」
困った顔をしながら、クリームソーダーをストローでずずずっと音を立てながら飲んでいる。
「美咲ちゃんが言ってるのは、恋人同士になろうって意味じゃないのかな?」
「え? 恋人同士になったの?」
敦貴は、他人事のように驚いた様子を見せる。
「たぶん、付き合うってそういうことなんだと思う」
「えー、恋人同士ってなにするの?」
「そうだな。デートするとか?」
「デートって、なにすればいいの?」
「僕もしたことないからなあ。敦貴が一緒に行きたいところに行けばいいんじゃないかな」
敦貴はスプーンでクリームソーダーのアイスの部分をすくい、大きな口を開けてぱくりと食べ、満足そうな顔をした。
「ゲーセン行きたい」
「美咲ちゃんと相談したらいいよ」
「コウちゃん、これから行こう!」
残りのソーダを飲み干し、即座に立ち上がる。
「え? デートの話じゃないのか?」
「それは、またあとで考える。コウちゃんとゲーセン行きたいの」
「わかったよ」
敦貴と彼女がうまくいくよう何かしてあげたいと考えていたのに、知らないうちに敦貴は先に進んでいた。
取り残されたような感覚に、寂しさを覚える。
これからもこのまま彼の隣にいてもいいだろうか。
「コウちゃん、今日こそは、あのぬいぐるみを取るよ!」
皇祐の心配をよそに、敦貴はこちらを見て嬉しそうに笑った。それにつられて、頬が綻んでしまう。
彼の前だと自然に笑顔になるのだ。
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