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 朝、学校へ行くと、敦貴の席の周りに男友だちが群がっていた。 「コウちゃん、おはよう」  皇祐の姿を見て真っ先に声をかけてくるのは、いつも敦貴だ。 「おはよう」  皇祐が返した挨拶に穏やかな笑顔を向けてくれる。あまりにも嬉しくて、頬が緩みそうになった。気を引き締めるように唇をぎゅっと結んだ。 「仲谷、聞けよ」  群がっていた男友だちの一人、福田がニヤニヤしてこちらを見た。  彼は敦貴に何かと絡んでくるから必然的に一緒にいることが多いが、皇祐とはほとんど会話をしたことがない。  だから、こうやって話しかけてくるのは珍しかった。 「何かあった?」 「アツキが昨日、彼女とキスできたんだって」 「え……」  一瞬、息ができなくなったように苦しくなり、言葉をつなげられなくなる。 「そんな反応になるよな。このアツキがだぞ。信じらんなくねー? 今、嘘ついてないか取り調べしてるとこ」  ヒヒヒと笑って面白おかしく言う福田に対して、敦貴は不貞腐れたような声をあげた。 「嘘ついてどうすんだよ。やっぱ、言わなければ良かった」 「アツキにはできないと思ってたけど。もしこれが本当なら、オレのアドバイスのおかげだな」  福田はふふんと得意げな顔をしている。  皇祐は席に鞄を置き、その場を離れようとした。 「コウちゃん、どこ行くの?」 「あ、日直だから職員室に日誌を取りに行くよ」  日誌なんてどうでも良かった。  ただ、敦貴から離れる理由が欲しかったのだ。  彼女の美咲とキスをした話なんて聞きたくもない。  他のクラスメートは興味津々で、「もっと詳しく聞かせろよ」と騒いでいた。  キスをしたと言う事実だけでも衝撃的なのに、これ以上聞いたら、この胸の苦しみがどうなるのか想像がつかなかった。
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