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 彼の傍にいるのは心地良い。  敦貴も皇祐と一緒にいることによって、同じ思いを抱いていてくれたら――。  皇祐は、美咲の話題を出すことにした。  敦貴にとって、何でも話せる1番の友だちになりたかったのだ。  口を開けかけたその瞬間、敦貴の方が先に言葉を発した。 「ねえ、コウちゃん」  思わず口を噤んだ。  彼女の話をするのだろうか。  そう身構えていたら、 「エッチってしたことある?」  思いもよらない言葉が返ってきて、変な声が出た。 「へ?」 「福田がさ、付き合ってる彼女がいるのに、エッチしないのは男じゃないとか言い出してさ」  彼女とキスした話をするのかと思っていたのに、敦貴の中では、もう次の段階に進もうとしていた。  好きな人と付き合ったこともなく、キスをしたことがない皇祐が、誰かと性的行為をしたことがあるわけがない。  自分だけが取り残されているような感覚に陥った。  友だちなら、話を聞くべきなのだろう。  だが、相手は皇祐にとって好きな人。  他の人とキスをした話だけじゃなく、その先の話も聞かなくてはいけないなんて堪えられる自信がなかった。  この先、彼女との仲が深くなり、一緒にいることが増えるのなら友だちは必要なのか。  敦貴にとっての自分の存在価値がわからない。  彼女のことを相談するだけに必要な存在なら、皇祐でなくてもいいだろう。  その役割を自分は果たせないような気がしていたから。 「コウちゃん、オレの話聞いてる?」 「あ、ごめん。そういう話は福田くんとしなよ」 「だってさ、経験豊富だからって自慢ばかりして、なんかイラってくるの!」 「僕はアドバイスできないよ」 「でも、この間キスできたのも、コウちゃんのおかげだし」 「何もしてないだろ」 「練習したじゃん。ねえ、今回も練習したらダメ?」 「なんの練習?」 「えっちの練習」 「え!? なに言ってるの?」  驚きのあまり素っ頓狂な声を上げてしまう。  しかし、動揺している皇祐のことはお構いなしで、敦貴は話を続ける。 「エロ本とか動画とか見たけど、やっぱりコウちゃんと練習した方がいいなあって」 「だから、僕は経験がないんだよ。福田くんと練習しなよ」 「やだよ! なんでアイツと練習しないといけないの。コウちゃんがいい。ねえ、お願い」 「僕は役に立たないよ」 「コウちゃんと練習したら、きっとうまくいくと思うんだ、ねえ、だめ?」  両手を合わせてお願いポーズ。困ったような顔で期待の眼差しを向けてくる。  好きな人だからなのだろうか。敦貴に頼られると皇祐は断れないのだ。  渋々承諾するのだが、本当は嫌だった。彼女とうまくいくために自分が協力するなんて。  敦貴の隣にいながらも、ぐっと締めつけられる苦しさに襲われていた。
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