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「いやだって……!」
「え、抵抗するシチュエーションなの? 続けたら嫌われる?」
そう言いながらも敦貴は止めなかった。
骨ばった手がTシャツの中でもぞもぞと動く。皇祐は敦貴の指が自分の肌に直接触れるのを感じた。その指は温かく、やわらかい感触があった。敦貴は肌をなぞるようにゆっくりと動かし、皇祐はその動きに合わせて身をよじらせる。もう一方の手もTシャツの中に入れてきて、両手を背中の方に移動させた。
敦貴の顔がすぐ目の前にあるのを感じ、皇祐の鼓動は早鐘を打っていた。
「この辺に下着を外すやつがついてるんだって。うまく外せるかな?」
背中で指をこちょこちょと動かし、皇祐の顔の目の前で喋る。
身体中が熱を持ったように熱くなり、息が上がっていた。呼吸が乱れて上手く呼吸ができない。
「あつ、き……僕は、下着をつけてない」
「うん、シュミレーション」
皇祐を抱きしめるように両腕を背中に回し、敦貴は顔を首元に埋める。
「なんか、うまくできなさそう、どうしたらいいの?」
敦貴が話すたび、彼の吐息が首にかかって、皇祐の身体が震える。
息を整えようとしても、敦貴が皇祐の上に乗っかりながら身体をもぞもぞと動かすから、なかなか落ち着かなかった。
彼の重みは少し心地良い。だが、床はカーペットを敷いているとはいえ、硬くて痛い。身体の大きい敦貴は、さっきから動くたびに足をテーブルにぶつけていた。
「ねえ、コウちゃん、床と背中がくっついていて下着外せる自信ないよ」
敦貴は少し苛立っているようだった。
皇祐を片手で持ち上げ、身体を少し浮かせる。その際、敦貴の膝が皇祐の股の間にグッと入り込んだ。
「あれ? コウちゃん」
なぜか驚いた顔をして、皇祐を見た。そして、言いにくそうに言葉にした。
「勃ってる……?」
「え?」
身体を起こした敦貴の視線の方に顔を向けた。
制服のズボンが象徴するかのように膨れ上がっている。
「これは……」
慌てて敦貴から距離置いた皇祐は、前を隠すように膝を抱え、体育座りをして顔を伏せた。
「女の子とやってるの想像しちゃった?」
敦貴は、ははっと笑った。
彼に触られて、敦貴は女の子とこんな風にするのかと嫌な思いを抱いていた。
だけど、その一方で、このまま敦貴と触れ合っていたいと考えていたのだ。
まさか身体が反応していたなんて。
ただの練習なのに、敦貴の息遣いを感じながら彼に求められていると勘違いをした。
「……ごめん」
「なんで、謝るの? 良かった。コウちゃんって、エッチな話しないから好きじゃないのかと思ってた。やっぱり想像して勃っちゃうよね」
想像した相手は女性じゃない。敦貴だ。
皇祐に向けてくる視線、じっとりと肌に触れる指先、敦貴のすべてを自分のものにしたいと考えた。
恥ずかしくて、気持ち悪くて、消えてなくなりたかった。
「帰るよ……」
「え? 怒ったの?」
「ちがう、用事を思い出した」
「でも、それ大丈夫? 抜いてったら?」
「大丈夫。でも、治まるまでここにいていい?」
「うん、いいよ」
敦貴は皇祐の気持ちには全く気づいていないようで、それ以上何も言わなかった。
いつものように隣でジュースを飲みながらお菓子をもくもくと食べていたから、救われる思いだった。
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