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「仲谷くん」
廊下で声をかけてきたのは、敦貴の彼女である美咲だった。
「敦貴なら、教室にいたけど」
そう伝えると、美咲はもじもじとしながら言葉を発した。
「仲谷くんに、お願いがあって」
「お願い?」
意を決したような表情をして、彼女は勢いよく話し出す。
「敦貴くんと一緒にお弁当が食べたいの。あと、放課後も一緒に帰りたい。だけど、仲谷くんと約束しているからって、いつも断られちゃって」
そこまで話した途端、急にしゅんと落ち込むように顔を伏せた。
敦貴に対する美咲の想いが伝わってきて、胸が痛くなる。
「そっか、気づかなくてごめん。美咲ちゃんと一緒にいられるよう僕からも敦貴に言っておくよ」
「ありがとう、仲谷くん」
頬を染め、満面の笑みで微笑んだ彼女は、とても愛らしく見えた。
自分がいるせいで、二人の仲が進展しなくなる。
それでは、敦貴が幸せになれない。
二人の邪魔をしてはいけないのだ。
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