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ハーキュリーズのライブ
萩原英は14歳、中学三年生だ。
1965年、この年は、世界的にエレキギターを使うバンドがブームを巻き起こした。英も近頃はロックに夢中になっている。
夏休みに、大阪のライブハウス『メキシカン』に、東京からハーキュリーズというバンドが来ることになった。
ハーキュリーズは在日外国人だけで結成したバンドだ。その卓越したギターテクニックが有名で、若者たちの憧れの的だった。ルックスもカッコいい。
英の大学生の兄・瞬は、そのハーキュリーズのライブを、彼女と二人で見に行くと言う。
何としても一緒に連れて行って欲しいと、英は頼んでいるところだった。
交渉している相手は、
瞬兄さんと、その彼女、ユカさんだ。
「ねぇ──お願いだから、僕も連れて行ってよ!ハーキュリーズ絶対見たい!」
「ダメダメ! お前まだ中学生なんだから。あの店は中学生は入れてくれないんだよ」
簡単に却下されてしまった。
「僕、大人っぽい格好して行くから」
英は引き下がらない。
「チビには無理! 大人っぽい格好なんかしても、所詮ガキにしか見えないよ」
「え~っ 行きたいなあ──」
完全に兄さんから拒絶されて、英はしょんぼりしてしまった。
ユカは、しばらく二人を見比べていたが、突然ぱちん、と指を鳴らした。
「そうだ!いい考えがあるわ!」
「何、ユカさん どうしたの?」
「英ちゃん、女の子の格好するのよ」
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