季節限定、桜餅。

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「部長。みつみつ堂の新商品です。よかったら、食べてもらえませんか」  優子はそう言って、部長の机に桜餅がのった皿をコトリと置く。 「桜餅か、昼ご飯後のおやつにピッタリだね」  早速手を伸ばした部長に、優子はニコリと笑いかける。 「食べ終わったら、アンケートをお願いします」  そう言って、優子は他の銀行員にも桜餅を配っていく。 「あ、美味いなあ。……ん?」  部長は机に残された紙を手に取って、首を傾げる。アンケートの紙には、「美味しいか、餡の量、上に乗った桜の塩加減」の3つの項目で5段階評価に丸を付ける形式になっていた。備考欄にも意見が書けるようになっている。 「結城さんは抜かりないなぁ」  一人呟いた部長は、ボールペンでサラサラと書き始めた。  アンケートの結果、「餡の量はもっと増やしてほしい」、「餅をしっとりしてほしい」との意見が多かった。試作品を作り直してもらうこと数回。  そして、ついに出来上がった。  餡はたっぷり、餅はしっとり、上にのった桜は絶妙な塩加減。桜餅の葉っぱは一緒に食べても美味しい。  完成品を銀行で配ると、「これは美味しい」と何人からも太鼓判をもらった。  優子はアンケートを集めて確認すると、気になる意見があった。新人の高瀬くんの意見だ。 『100円なら安い。150円ならちょうどいい。200円なら高いから買わない』 「私も同じ意見かな。値段は150円で提案してみよう」  そんな銀行内での反響を店主に話したら大変喜んでくれた。値段も原価から収益を弾き出して150円を提案して、採用された。  さらに、若者を取り込むべくSNSで宣伝するようにアドバイスをした。SNSでの宣伝は考えていなかったらしく、店のアカウントを作るところから始まった。  のれんのミツバチがSNSのアイコンになっている。スマホの操作が苦手だと言っていたのに、上出来だ。  そして――満を持して新商品の桜餅が発売された。
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