季節限定、桜餅。

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 みつみつ堂の店主に、おかしの大月を見にいった話をすると、店主は待っていましたとばかりに身を乗り出した。優子の作戦を楽しみにしているのだろう。 「で、優子さんは、次にどうしたらいいと思いますか?」 「ちょっと待ってください。私の考えを話す前に、一個人としての思いを伝えさせてください」 「……なんだろうか?」 「私は店主の作るお菓子の大ファンです。おかしの大月のどら焼きも食べて確信しました。みつみつ堂は餡が美味しいばかりでなく、餅との調和が素晴らしいです。どのお店にも負けません! 店主、もっと自信を持ってください!」 「あ、ありがとう……」  熱弁すると、優子の気迫に押された店長は恥ずかしそうに下を向いた。 「ところで、次の作戦は――」 「作戦なんて、もうありません」 「ええ? 諦めるしかないってことですか?」  ついに見放されたのか、と店主は絶望の顔を浮かべる。  優子は安心させるように、柔らかい視線で店主をじっと見つめた。 「いいえ。店主は充分頑張りました。私だけでなく、固定ファンができたはずです。私からお願いしたいことは――今は辛いかもしれませんが、安定的に作り続けることです」  優子はにっこりと笑った。  数日経つと、客足はすぐに戻ってきた。  優子の言う通りだったと、店主は深く納得している。  口コミでみつみつ堂の評判が広がっているのだ。  みつみつ堂のお菓子は一度食べるとやめられない。桜餅だけでなく、他の和菓子も美味しい、と。  店主から、あのときに諦めなくてよかったと感謝してもらえた。
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