【第一話】 彼と私の共通点?   プロローグ

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【第一話】 彼と私の共通点?   プロローグ

「僕の申し出を受け入れてくれるなんて、心の底から嬉しいよ。エレーゼ」  彼は壁一面の大きな窓の前にすらりと立ちつくし、マリンブルーの瞳で射抜くように私を見つめてくる。西日が差し込み、彼の美しく流れる髪がより煌めいて見える。その見目は実に、絵画から抜け出てきたような優美な貴公子だ。  ここはシャングリラホテルの一室。格調高いホテルの寝室に、彼と私、たったふたりきり。  私は今、知り合ったばかりの、この辺境伯家ご令息に求婚されたところ。これを、病み上がりで本調子じゃなかったせいか、“まんまと乗せられ”お受けしてしまった。 「君はなんて懐の深いご令嬢なんだ。この出会いに感謝しよう」  あなたはそうおっしゃいますが、私はまだこの出会いに感謝するほど、気持ちが釈然としていない。だって、なんでこんな素敵な人がわざわざ私をって、きっとみんな不思議がる。 「君はいつまでも、どこまでも、自由に生きていってくれて構わないから。敬愛する父君との暮らしを、僕は決して邪魔しないからね」  釈然としてはいないけど、それがなにより重要だ。このように好条件な結婚、他にないだろうな。 「また細かい契約内容を、これからふたりで詰めていこう。どうぞよろしく」 「ええ。末永くよろしくお願いいたします」  私は差し出された彼の手を取った。  契約結婚。私たちはそれぞれの、気ままで自由な人生のために、仮面夫婦として協定を結ぶことに決めたのだった。
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