side:A  試される……何?

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side:A  試される……何?

 それからアンジェリカの喋りに耳を傾けながら作業を進めている。当の彼女は座って詩集を読んでいるだけだが。 「この度はどうして?」 「出張で近くまで来てさ、2日余ったから寄ったんだよ」 「ストラウドになんて寄らず、まっすぐノエラに帰ってくれば良かったのでは」  アンジェリカ、やっぱり照れてるのか? ぷいっと目を逸らした。 「いや、通り道だったから」 「……そうですか」  あ、露骨に白けた顔になった。  頼むよ、君の機嫌が直らないと報酬がパァになるんだよ。  何かご令嬢が喜びそうなこと言わなくては!  これがエレーゼだったら…… 「いちばんにっ、君に会いたかったから!」  ……“エイリーク様ってば♡ もう♡” ってモゾモゾするエレーゼが思い浮かぶよ。 「…………」  ん、ダメか? 「ジークムント様」 「はい……」 「私のつま先に、キスして」 「……は??」  椅子に腰掛けたまま彼女は、右足を前にずらした。 「ほら。この間、おっしゃったじゃないですか」 「?」 「王都の若者の間では、つま先へのキスで永遠の友情を示すことが流行ってるって」  へ、へぇ!?? 「この間はしてくださいましたのに。憶えていませんの?」 「ええ!? そ、そうだったかなぁ!?」  声が上擦ってしまった。 「あなたの友情もその程度ということですわね……」 「い、いやぁ……」  なにそれ!? 都の若者ってそんなことしてるのか!? 友情なのそれ、なんか重くない!?  しかし、とにかく、この場をうまく収めるには…… 「ここで……、それをしたら、機嫌を直してくれる?」 「……機嫌、機嫌って。別に私、通常の気分ですが」  自覚ないのか! 「まぁ、してくれましたら、以降門前払いは決していたしません」  今度はにっこり微笑まれた。  …………。仕方ない。ごめんエレーゼ、報酬のためだから!! なんなら君に何倍ものキスを捧げよう!!  僕はため息交じりに、彼女の足元へと踏み込むのだった。
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