美人の妹と比べられて…

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美人の妹と比べられて…

 彼女がお父様のすぐ隣に座って談笑する。ああ、このふたりは親子なのだな、と、額縁に飾られた絵画を見るようにして私は思う。  アンジェリカは、千人に聞けば千人ともが「これは美しいご令嬢だ!」と認める正真正銘の美人である。  整った顔立ちにありがちな、とっつきづらそう、お高くとまってそう、という先入観を一瞬で蹴散らす、可愛げ満載の美人である。  父と母のいいとこ取りをした、スレンダーな骨格の持ち主でもある。  ブロンドの父とブロンドの母から生まれた当たり前の金髪だ。これは兄もだ。なのに私は、いや私だけ、ブラウンの髪なのだ。この世にブロンド人口は1.8%しか存在しない。ブロンドでない方が当たり前なのに、私は私の優性遺伝が異常に思える……。  眼の色だって、妹はキラキラと透きとおるエメラルドなのに、私はまるで翡翠(ヒスイ)のような……。私はなぜか父と母の外見をこれといって受け継がなかった。先祖のどこからもらったのか知らないが、私の外見は何をとってもごく並である。  そんな私たちは、物心ついた時からふたり揃って社交界に送られた。となると、彼女と私がそこでそれぞれどういった“もてなし(あつかい)”をされたか、想像つかない者はいないだろう。  人々に囲まれ褒められ喜ばれ、彼女はどんどん華やかになっていく。自信が彼女を美しくする。私は逆に、身に着けるドレスもアクセサリーも地味になっていくばかり――。  それでも。そんな私をお父様だけはいつも、可愛い、美しいと言ってくれる。 「あら、お姉様にご縁談ですか? どちらのお方です? お相手のお歳は? 私の知っている方なのかしら」  彼女はどうでもいいことにもとりあえず首を突っ込む性分だ。そこが男性に「この子、僕に興味を持ってくれてるのかなソワソワ」と勘違いさせる、無欠の天然魔性女なのだ。
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