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見合い相手の事前情報チェキラッ
「お姉様?」
「ねえ、私、全然気にしないから。先にアンジェリカが結婚すればいいのよ」
というか早く家を出て、お父様とふたりきりの、心豊かなアフタヌーンティータイムを私に謳歌させて。
「アンジェリカがその貴公子との縁談を受けるのはどうかしら?」
「私は、私自身で選びますわ。お相手も、時期も、その他もろもろの条件も」
選べる立場にいるって分かってる女は強い、ブレない。
そりゃ私だって、お父様の希望はすべて叶えたい。重荷になることはもちろん、悩みの種にもなりたくない。もう思春期じゃないのだもの、駄々こねるのも恥ずかしいわ。
「一応、お会いするだけ……なら、構わないわ」
「エレーゼ! それでこそ私の娘だ。勇気を出した君は輝いているよ」
そんなもの結局、相手の気持ち次第なのだから。何度紹介されても、向こうから断られるのが関の山。
***
見合いの日がやってきた。私は馬車でお相手がお待ちのノエラ領へ向かっている。父と――なぜか、妹と。
「お姉様、本日はお見合いの主役だというのに、どうしてそんな地味なお色のドレスを着ていらしたの?」
「このラベンダーカラーがいちばん好みなのよ、放っておいて」
あなたこそ、どうしてただの付き添いが平気で真っ赤なドレスを着られるのか! と言ってやりたい。が、疲れるだけだからやめておく。
「このたびのお相手のこと、私なりに調べてまいりましたわ。やはりお隣の社交界のお方ですので、いつもより情報が少なかったのですが」
この子の情報網は役に立つこともあるのだけど、今回に限り、どういった話が舞い込んできても破談一択なので適当に聞き流しておこう。どうせいらないと言っても喋りちらすのだろうし。
「お相手のお祖父様が、現在は領主でいらっしゃるのですよね」
「ああ、そうなのだよ。エレーゼは全然話を聞いてくれなくてね」
「お父様はすでにお亡くなりになられていて、現領主が孫にそろそろ家督を譲りたいがために婚姻を、ということでしょう。そして、問題はここからですが」
「なに?」
「どうやらお相手も、お見合いのたびに、先方に断られているとかで」
「お相手“も”?」
「あら、失言でしたわ」
確かに私も断られているので、構わないが。
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