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「ああ! わかってくれたのね、リリー!」
「ならこれからすべきことはわかるだろう? 今後はルシアン家の令嬢として」
「それは嫌」
涙が一滴も出なくなった両親の怒涛の勢いに対しリリーは冷たく言い放った。
全て言われなくてもわかっていた。
『ルシアン家として相応しい令嬢になりいいところに嫁ぎなさい』
リリーが冒険者となる前に耳が腐るほど聞いたことだ。
「いーや。リリー。もう我儘は聞けないぞ。冒険者にはもうなれんのだ。ならば安心で安全な道であるルシアン家としての道を進むのが一番リリーのためだ」
「それでも嫌なものは嫌なのっ」
「ねぇ聞いて。リリー。貴女が女性らしく生きることを嫌がっているのは知っているわ。でもね、リリー。貴女は女性の心をもった女性であり、由緒正しい家の一人娘なの。私たちがいなくなっても元気で過ごせる道に進んでくれないと、私もお父さんも心配で夜も眠れないわ」
「わかってるわ。わかってるけど……っ」
「それにリリー。私はリリーの生き方を否定しているわけではない。だから他の令嬢は着ない特注のドレスをプレゼントしたんだ。動きやすくて軽いだろう? それなのに女性らしい。義足もうまく隠せているしな。それを着ているだけで唯一無二の令嬢になれているんだ。令嬢としての作法はこれから学べばいい。だからリリー。お父さんのお得意さまと是非お見合いをしよう」
「え!? ちょちょ、ちょっと待って、帰ってきていきなり見合いってどういうこと!?」
父であるバディスの発言にリリーが動揺していると、母であるミリアが「実はリリーが左足を失ったと聞いた時、お父さんのお得意さんの息子さんが英雄としてのリリーを憧れていたと教えてくださってね。もしお相手がいないなら是非結婚相手となってほしいというお話が来ていたの」と嬉しそうに言った。
「まだリリーは作法を覚えていないからルシアン家として相応しい令嬢になるには時間がかかると返したのだが、いくら時間がかかっても構わないとのことだ。こんな好条件でリリーを求めてくれるところは他にないと思うんだ」
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