第一章 出会い

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 思いがけない再会に、内心少し動揺していたけれど、周囲に悟られないよう、貴臣は平静を装った。 「名前はなんて言うの?」 「遠野昴です」  声はけっこう低かった。  もう少し高い声を想像していたが。  室内がまだざわついていたので、貴臣は、手をぱんぱんと叩いて注意した。 「ほら、休憩時間じゃないぞ」  それから行儀良く椅子に腰かけている遠野昴に話しかけた。 「ずっとそこに座ってなくてもいいよ。自由に移動していいから」 「はい」    彼の横顔を盗み見る。  この鼻のライン、やはり一級の芸術品にしか見えない。 「何年生?」 「あ、2年です」 「芸大行きたいんだね」 「えっと……はい」  昴は一瞬、ためらいを見せた。 「もし芸大志望じゃないんだったら、ここに来る必要はないけど」 「いえ、受験したいです。そう思って来ました」  今度はきっぱりと言い切った。  しばらくすると、アトリエ内のざわつきも収まり、画用紙に木炭がこすれる音だけが聞こえるようになった。
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