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90分後、チャイムの音が鳴り響いた。
「よし、時間だ。今日はここまで」
20名ほどの受講生は手にしていた木炭をイーゼルの桟に置いた。
「明日、講評するから」
「はーい」
生徒たちはぱたぱたと道具をしまい、次々と部屋から飛び出していった。
12時45分。
早く昼メシにありつきたいんだろう。
「これ、ありがとうございました」
昴はスケッチブックと鉛筆を返しにきた。
「ああ、その絵は持って帰ればいいよ」
貴臣がそのページを破って渡すと、昴は笑みを浮かべて礼を言った。
「で、どうするの?」
「はい。決めました。明日から受講したいです。途中参加でも大丈夫ですか」
「まだ始まったばかりだから、充分ついていけると思うよ。じゃあ、一緒に受付まで行こうか」
「はい」
部屋を出ると、数名の女子が廊下に残っていた。
昴に話しかけたそうにモジモジしている。
が、近寄りがたいのか、こっちにはやってこない。
羨ましそうな顔で貴臣を見ている彼女たちに「また明日な」と声をかけ、受付に向かった。
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