第一章 出会い

15/20

95人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
〈subaru〉  帰り道、昴は心が晴れ晴れと澄みわたっていくのを感じていた。  今日は自分にとって、記念すべき日だ。  すごいことがふたつも起こった。  まずひとつめは、計画通りデッサンの授業の申込ができたこと。  10万円近い受講料を支払うときは、さすがに足が震えたけれど。  そして、もうひとつは、ずっと忘れられなかった人、小川先生に出会えたこと。  昴の描きたい気持ちを察してスケッチブックを渡してくれたとき、心臓が飛びだすかと思うほど、胸が高鳴った。  この、貴臣への好意が何から発するものか、自分でもわからない。   そばにいるだけで、こんなにドキドキする相手は初めてだった。  中学から男子高に通っていることもあり、昴は恋愛経験がなかった。  じつは、男女の別なく、昴への憧れの視線はあちこちから届いていた。  けれど、その方面にまったくうとい彼は、いつも気づかずにスルーしていたのだけれど。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

95人が本棚に入れています
本棚に追加