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「ねえ、今日来た遠野くんって、S高生なんだって!」
さっき彼を案内した加藤さんが興奮気味に教えてくれた。
「へえ、S高なんですか」
S高といえば、毎年3月ごろになると、週刊誌で「東大入学者数全国一!」と騒がれる、トップ進学校。
ということは、遠野は顔面だけでなく、学力の偏差値も高いわけだ。
でも、S高生なら、美大クラスより本校の東大進学クラスのほうがしっくりくる。
貴臣だけでなく、工藤も同じ疑問を抱いたようだ。
「S高生がなんでうちに来てんの?」
「さあ? でも芸大志望って言ってましたけど」
「奇特な奴がいるんだな。S高行ってるんなら、東大以外ならどの大学でもオールパスだろうに」
「絵が好きでたまらないって感じでしたよ」
「好きだけじゃな、喰っていけねえし。今のうちに考え改めたほうが利口だって、言ってやったほうがいいんじゃない?」
「うーん、そおっすね……」
また適当に相槌を打ちながら、絵を描いていたときの昴の姿を思い出す。
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