第一章 出会い

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「ねえ、今日来た遠野くんって、S高生なんだって!」  さっき彼を案内した加藤さんが興奮気味に教えてくれた。 「へえ、S高なんですか」  S高といえば、毎年3月ごろになると、週刊誌で「東大入学者数全国一!」と騒がれる、トップ進学校。  ということは、遠野は顔面だけでなく、学力の偏差値も高いわけだ。  でも、S高生なら、美大クラスより本校の東大進学クラスのほうがしっくりくる。  貴臣だけでなく、工藤も同じ疑問を抱いたようだ。 「S高生がなんでうちに来てんの?」 「さあ? でも芸大志望って言ってましたけど」 「奇特な奴がいるんだな。S高行ってるんなら、東大以外ならどの大学でもオールパスだろうに」 「絵が好きでたまらないって感じでしたよ」 「好きだけじゃな、喰っていけねえし。今のうちに考え改めたほうが利口だって、言ってやったほうがいいんじゃない?」 「うーん、そおっすね……」  また適当に相槌を打ちながら、絵を描いていたときの昴の姿を思い出す。
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