第一章 出会い

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 あの様子じゃ、やめとけって言っても聞く耳持たないだろう。  それに進学校の生徒が美大を目指しちゃいけないって法もないし。  どっちにしろ、自分が首を突っ込む話じゃない。 「小川、メシ喰いに行くか?」  珍しく、工藤が誘ってきた。  だが、貴臣はこれも珍しく、この近くに勤めている友人と約束していた。  良かった、先約があって。  この人、苦手だから。 「あ、すいません。約束があって」 「ちぇ、付き合い悪いな、相変わらず」 「すんません」  貴臣はこれ以上何か言われる前に、デイバックを手にとり「お先です」と声をかけ、さっと事務室を出た。 *** 「お待たせ」  そう言いながら、ポニーテールの女性が、校舎入り口の前に立つ貴臣のほうに駆け寄ってきた。 「だいぶ待った?」 「いや、5分も待ってない」 「時間もないし、あそこにする?」  と、津野七海は道路の向こうを指し示す。 「ああ、いいよ」  七海とは学部2年生のとき、大学のカフェで同席したのがきっかけで友達になり、もう4年になる。  ほぼ唯一と言っていい、気の合う友人で、大学卒業後もたまにこうして顔を合わせていた。
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