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デザインを専攻した彼女は、卒業後、この近くにあるデザイン事務所に就職した。
業界では名の知れたところで、七海は高倍率の就職試験を勝ち抜いた。
学生時代からエネルギッシュだったけれど、最近、その性格にますます磨きがかかっている。
道路を渡り、オフィスビルの一階のカフェに向かった。
「講師の仕事はどう?」
黒い麻のノースリーブ、白のジョガーパンツ、髪を低めのポニーテールにまとめていて、いかにも最先端の仕事をしてそうな七海は、こういう小洒落たカフェがとてもよく似合う。
一方の貴臣は、七分袖のシンプルなシャツに黒のアンクルパンツ、素足にスニーカー。シンプルだけれどセンスを感じさせるコーディネートだ。
傍目には、今どきの都会的カップルだろう。
「俺はまだ1,2年生を教えているからいいけど、先輩は受験生クラスを持たされて、大変らしい。そっちは?」
「あいかわらず忙しいよ。プレゼン準備に徹夜、通れば通ったで徹夜。もうブラックすぎ」
と文句を言いながらも、表情には望んだ仕事についた自信がみなぎっている。
「身体壊さないように気をつけろよ」
「うん。ありがと」
七海は思ったことはなんでも口にするタイプで、心を推し量ったりする必要のない付き合いができる。
そんな関係が、貴臣には心地良かった。
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