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第二章 例外
〈takaomi〉
翌日、貴臣が出勤すると、昴が先に来ていた。
鍵の閉まっているアトリエのドアにもたれて立っている。
デッサン用の木炭を、箱から出して嬉しそうに眺めている。
「おはよう、早いな」
「おはようございます。ねぇ、これって本当の炭なんですよね」
「ああ。使うの、はじめて?」
「はい。学校では美術を取ってないから」
美大志望なのに、美術を取ってないのか。
違和感を覚えたが、授業の準備をしなければならなかったので、詳しい話を聞く時間はなかった。
貴臣はドアを開け、昴に入るように促した。
「じゃあ、遠野くんは……その席に座って」
「ここですか?」
「うん、そこ」
他の生徒も徐々に集まってきた。
「おはようございます〜」
みんな、特に女子たちはチラチラと昴のほうを気にしながら、それぞれの席に着いた。
その日の課題は円錐と四角柱のデッサン。
3グループに分け、それぞれが中央の机に置かれた立体を描く。
昴と同じグループになった女子は、宝くじに当たったような顔をしていた。
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